Tastar de Corde -Twitter log-

鶴巻から荒町、赤坂、そして与良を歩く。
雨の中、傘を差しながらの散策だったけど、路面に湿り気を与える程度で、気になる降りではない。
鶴巻を北から南へ、赤坂に向かって歩いてみる。

『小諸砂石抄（1764）』には「鶴巻　与良分、五兵衛畑なり」、『小諸温古（1790）』には、「鶴巻　赤坂上町裏通、鶴何処より空を飛行にも必ずこの辺に輪を掛け、城の上を旋ろて飛ぶ事無疑」とあるから、この時代は畑で、鶴がどっかから飛んできて、この町の上を旋回していたよう場所だったらしい。鶴巻の名前の由来だろう。

何処より　鶴が来たりて　空を舞う

鶴巻が今の町並みを形成してきたのは、明治の末に鉱泉を掘り当て浴場を設けてからで、道路を改修して家屋が増えて来たのだそうだ。鶴巻の湯は、当時の面影を伝えるもののひとつかもしれない。

VIOだった建物の正面から、国道を挟んだ向こうの、銀行横のゆるい左曲がりの坂を上って行く。旧北国街道から、鶴巻に降りてくるこの辺りは神明町、末広町だ。坂を上りきったところに、赤い灯篭がいくつか並んであった。今では民家のようだが、この辺りに、伊勢大神宮があったというから、その名残だろうか。民家の入り口と思われる場所に注連縄が張られていた。



ここから北国街道と平行に、赤坂の坂道までまっすぐに鶴巻商店街が続く。
大正の頃には料亭が多くあったようだ。鶴巻から裏の方に入って行くと、今でも居酒屋やスナックが多い。僕の小学生の頃は、パチンコ店など遊戯場などもあって、おじさんに連れられて来た記憶がある。もちろん自分がするわけでなく、ただメロンの形の入れ物に入ったアイスクリームを買って貰って、食べていた事を覚えている。
小学生の頃の記憶といえば、この辺りには製糸工場がいくつかあったように思う。祖母が勤めていた工場に行った事があった。『ああ、野麦峠』の映画で見るような、繭から糸をほどく機械がいくつかあって、繭から出てきたサナギを食べていた人もいた。
「ウエッ」て感じだ。それに工場の中は独特の臭いがした。


（鶴巻の通り）

先日のブログにも書いたけど、与良には北国街道から鶴巻に降りてくる小路が幾つかある。
こういった小路は赤線だった道だ。赤線と言っても、公認の売春地域の事ではなく、道路法の適用のない道路の事である。
民家に入って行く路地とか行き止まりになる事が多い。先日書いた瀬戸屋小路のように、小路のどちらに行っても大路に抜けられるのは珍しいという。


（赤坂）

鶴巻を赤坂に出て小諸市図書館に行く。小諸史誌で調べものをして、再び赤坂に戻る。鶴巻は通らず荒町の交差点まで行き、北国街道を行く。途中に与良館という休息所に立ち寄る。ここは松屋を改装した建物だ。松屋は虚子の小諸雑記にも書かれている。
ここにいた人から、藤村や虚子に関して色々と面白い話を聞けた。
僕は以前、『千曲川のスケッチ』に書かれていた囁道祖神を探した事があるが、見つからなかった。それが小諸善光寺の境内にあるというのだ。でも探しに行った時はそれらしき道祖神はなかったけど、見落としたのだろうか…。この小諸善光寺横の坂道を上って行って、長野自動車道の高架橋辺りが、藤村が行った寺窪辺りだ。

僕は藤村と虚子は、まったく時代が違う人だと思っていた。藤村が小諸に滞在したのは明治の頃だし、虚子は第二次世界対戦の頃だ。しかし、このふたりは同年代で、年齢もそんなに違わないのだ。
この明治と昭和という年号の隔たりがそういう錯覚を生むのだろう。藤村が小諸にいたのは二十歳代で虚子は七十歳代。いた時代に隔たりがあるのだ。

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