山裾の 稲穂が垂れて 青い空 ~五郎兵衛用水~
(天高くとは、こんな空をいうのだろうな)と、紅葉が始まりかけた木々の間を見上げて思う。
秋独特の筋状の雲はひとつもなく、ただ浅間山の上空に煙なのか雲なのか、見分けがつかない白いものが、青空を薄めているだけだ。
佐久平の広大な田んぼの中を、真っ直ぐ続く県道の両側に咲くコスモスは微動だにしない。風もなく、穏やかな日和だ。僅かに開けた車窓から入ってくる空気だけが流れてくる。
田園地帯の稲穂は黄色く色付き頭を垂れ始め、収穫の時を待っている。
次の信号で国道に出ると、
五郎兵衛記念館の看板が目に入った。
僕が走ってきたこの地区は、見渡す限りの田んぼが広がる稲作地帯となっている。
これだけの稲作の地になったのは、寛永八年(1631)、四年余りの歳月と私財を投じて、この地に用水を完成させた、
市川五郎兵衛の力が大きい。
もともとこの地は不毛の原野であったが、
五郎兵衛用水をもとに開墾が進められ、今のような稲作地帯になったのである。
僕の拙い文章ではうまく説明出来ないので、そこら辺は先ほど見えた看板の五郎兵衛記念館に訪れ、理解して頂けたらと思う。
この田んぼが広がる地帯を、少しでもそういった歴史的な事を知っていると、ただ何気に通り過ぎる風景が違ったものに見えてくるから面白い。
ここに限らず、おそらく他の全ての風景も、秘められた歴史があるのだろう。
国道を佐久方面に向かう。黄金の田園風景の左には浅間山がでんと居座っている。
(この風景に浅間山がなければ、何とも虚しい風景になってしまうだろうな)
穏やかな秋晴れの青空の下、僕はそう思った。
山裾の 稲穂が垂れて 青い空
(五郎兵衛用水跡を見た後、矢嶋から上原へ抜ける道で)
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